不定詞は苦手とする人が多い文法項目です。ここで躓いて英語が苦手もしくは嫌いになってしまう人も少なくないようですが,そのまま放置しておくと先々非常に困ったことになります。受験や資格試験などの準備をする上で,問題集の解説などを読んでもよくわからないし,英文の意味も正確につかめないということが起こるからです。
今回は不定詞の形と3つの基本的な用法に絞って解説しました。特に3つの基本的な用法「名詞用法・副詞用法・形容詞用法」は不定詞を学習する上での土台となる部分です。英語学習をする上では避けて通れないところですから,覚悟を決めて取り組むようにしましょう。
不定詞の形と用法
不定詞の形
<to +動詞の原形>をto不定詞,または単に不定詞といいます。不定詞は,1つの文に2つの動詞が必要な時に使われるものです。「to」があることからもイメージできるように,原則的として未来志向の意味をもちます。
We want to travel to Germany next year.
I like to eat lunch with her.
Jack went there to eat dinner with Mary.
I want something to eat.
不定詞を否定形にするときは,つねに不定詞の直前にnotを置いて<not to do …>の形にします。
My mother told me not to study so hard.
Be careful not to catch a cold.
不定詞の3つの基本的な用法
不定詞には,形は同じでも表す意味によって「名詞用法」「形容詞用法」「副詞用法」という異なる3つの用法があります。不定詞を学習する上では,まずこの3つの用法をきちんと区別できるようになることが大切です。
(1) 名詞用法:「~すること」という意味を表します。名詞と同じ働きをし,文中では主語・目的語・補語になることができます。
I like to read a book.
(2) 副詞用法:「~するために」(目的)や「~して」(感情の原因)という意味を表します。副詞と同じ働きをし,名詞以外の語句や文などを修飾します。
I went to the store to buy a watch.
(3) 形容詞用法:「~するための」,「~すべき」という意味を表します。形容詞と同じ働きをし,名詞や代名詞を修飾します。
He has no money to eat out.
不定詞の3つの用法
不定詞の名詞用法
不定詞の名詞用法では,不定詞が名詞と同じように主語・目的語・補語になり,「~すること(は/を)」という意味を表します。
(1) 主語になる不定詞:「~することは」
To play tennis is difficult.
To study English is interesting to me.
(2) 目的語になる不定詞:「~することを」
Tom wants to learn French.
I like to play tennis.
不定詞を目的語にとる主な動詞は次の通りです。まとめて覚えてしまいましょう。最初に「不定詞は未来志向」と書いた通り,これから何かを行う,という表現が多いことに気づくと思います。
・「始める」系の動詞
begin to do ~することを始める
start to do ~することを始める
・「意志・決心」系の動詞
decide to do ~しようと決める
mean to do ~するつもりである
plan to do ~するつもりである
try to do ~しようと努力する
promise to do ~することを約束する
・「好き・嫌い」系の動詞
like to do ~するのが好きである
love to do ~するのが大好きである
hate to do ~するのが嫌いである
・「願望・必要」系の動詞
want to do ~したい
wish to do ~することを願う
hope to do ~することを望む
need to do ~することが必要である
(3) 補語になる不定詞:「~することだ」
My job is to teach English.
My dream is to be a doctor.
不定詞の副詞用法
不定詞の副詞用法では,不定詞が副詞と同じように働き,名詞以外の語句や文などを修飾します。副詞用法の意味は色々あるのですが,基本的な2つの意味は次の通りですので,まずはその2つをきちんと理解しましょう。
①動作の目的:「~するために」
②感情の原因:「~して」
(1) 動作の目的を表す不定詞:「~するために」
She saved money to buy a new smartphone.
I went to the airport to see my father off.
He bought some vegetable to make a salad.
動詞のあとにくる不定詞が,名詞用法か副詞用法かは,不定詞の文中での働きから判断できます。
Tom wanted to see Mary.
⇒「to see Mary」がwantedの目的語になっている⇒名詞用法
Tom went to see Mary.
⇒「to see Mary」がwentを修飾して目的の意味を表している⇒副詞用法
「~するために」という目的の意味をはっきり表すために,「to do」の代わりに「in order to do」や「so as to do」を使うこともあります。
① I got up early in order to catch the first train.
② I got up early so as to catch the first train.
「in order to」と「so as to do」のニュアンスの違いは次の通りです。
in order to⇒目的を強調
so as to do⇒結果を強調
上の例文①では「始発の電車に乗るために早く起きた」けれど,実際に乗れたかどうかということまでは表現されていません。それに対して,例文②では「早起きして(結果として)乗れた」というニュアンスまで含まれています。
その他の違いについては別の機会に取り上げる予定です。
(2) 感情の原因を表す不定詞
感情の原因を表す不定詞は,<主語+be動詞+感情を表す形容詞+to do>の形で用いられます。
I was surprised to hear the news.
Tom was happy to see Mary.
(3) その他の副詞用法
①結果:「(…してその結果),…となる」
She grew up to be a lawyer.
②判断を示す形容詞を修飾:「~するのは」
Mathematics is difficult to study.
不定詞の形容詞用法
(1) 形容詞用法の不定詞の働き
形容詞用法の不定詞は形容詞と同じように働き,名詞や代名詞を修飾します。不定詞は必ず名詞の後ろに置かれ,<名詞+to do>という語順になって名詞を後ろから修飾し,「~するための」「~すべき」といった意味を表します。
There are many places to see in Paris.
He was the first man to come to the party.
He has a lot of homework to do.
(2) <-thing+to do>の場合
something, anything, nothingなどの-thingという形の代名詞を修飾する場合も,(1)のときと同様に-thingの後ろに不定詞を置きます。
I want something to drink.
-thingを形容詞と副詞の2つで修飾する場合の語順は<-thing+形容詞+to do>という語順になります。
I want something hot to drink.
※次の2つの文のように,意味はほぼ同じですが,不定詞の用法が違うものもあるのでしっかり区別できるようにしておきましょう。
I want to eat something. ⇒何か食べたいです。(名詞用法)
I want something to eat. ⇒何か食べ物が欲しいです。(形容詞用法)
(3) <不定詞+前置詞>
不定詞の形容詞用法には,不定詞の後ろに前置詞を必要とするものがあります。
Jack has many friends to talk with.
I need something to write with.
We are looking for a house to live in.
まとめ
今回は不定詞の形と3つの基本的な用法について勉強しました。今回の内容をまとめると以下のようになります。
不定詞の形:to+動詞の原形
不定詞の否定形:not to do
不定詞の3つの基本的な用法:名詞用法・副詞用法・形容詞用法
不定詞の名詞用法:名詞と同じように主語・目的語・補語になる。「~すること」などの意味を表す。
不定詞の副詞用法:副詞と同じように名詞以外の語句や文などを修飾する。「~するために」(目的)や「~して」(感情の原因)などの意味を表す。
不定詞の形容詞用法:形容詞と同じように名詞や代名詞を修飾する。「~するための」「~すべき」などの意味を表す。
不定詞は苦手とする人が多い分野ですが,まずは3つの基本的な用法をしっかりとおさえて,区別ができるようにしておきましょう。これがわかるだけで英文が格段に読みやすくなります。不定詞の様々な用法や原形不定詞についてはまた改めて取り上げる予定です。