英語を勉強し始めたばかりの人が文字や発音以外でまず戸惑うこと,それはおそらく「語順」の問題ではないでしょうか。日本語の文は比較的語順が自由なのに対して,英語では肯定文,否定文,疑問文などを作る際の語順が決まっています。また,日本語の助詞とまったく同じ役割を果たすものは存在しません。日本語を母語とする人にとっては,いきなり異なるルールの世界に放り込まれたようなものですから戸惑いを覚えるのも当然です。
これに対して多くの教育現場では,意味など考えずに反復練習をしてパターンを丸暗記しなさい,という教育がなされてきました(今も一部で残っています)。これでは英文法が苦痛・つまらないと感じる人が多くなっても仕方ありません。しかし幸運にも,丸暗記を強要するのではなく,なぜそうなるのかという意味をきちんと説明してくれる教師に出会った人は,きっと英文法が楽しく,面白く感じられるようになったのではないかと思います。
英語や英文法を理解するためには,まず日本語との違いを意識することが必要です。その中でも,今回は英語と日本語の語順の違いに注目してみたいと思います。
日本語の語順
まず,私たちの母語である日本語から見ていきましょう。日本語の文章では基本的に文末に動詞が置かれるため,最後まで聞かないと(あるいは読まないと),肯定文なのか否定文なのか,何の話なのか分かりません(残念ながら,頑張って最後まで聞いても何の話か分からないこともあります)。
また,日本語には「てにをは」などの助詞があるため,文末の動詞以外の語順(単語を並べる順番)の自由度は比較的高いと言えます。例えば,
① トムはメアリーを愛している。
という文は,語順を入れ替えて
② メアリーをトムは愛している。
としても意味は同じです。これは私たちが,「は」は「主語のしるし」であり,「を」は「目的語のしるし」であることを知っているからです。このように,日本語では助詞が文の意味を決定する上で重要な役割を果たしているといえます。
英語の語順
これに対して英語では<主語+動詞>という語順が原則で,この部分まで聞けば(読めば),少なくとも肯定文なのか否定文なのかは分かります。どんなに複雑な英文であったとしても,この<主語+動詞>という語順は変わりません。
また,日本語にあった助詞という概念もなく,文の意味を表す上で,語順が重要な役割を果たしています。例えば,上述の例文①と②を英語で表すと,どちらも次のようになります。
Tom loves Mary.
これを
Mary loves Tom.
としてしまうと,「メアリーはトムを愛している」という文章になり,意味が変わってしまいます。メアリーもトムを愛しているかもしれませんが,(トムにとっては不幸なことに)相思相愛ではない可能性もあるわけです。
トムとメアリーの恋愛事情はともかく,要は日本語における助詞の役割を,英語では主に語順が担当している,と考えれば良いかと思います。日本語と同じ感覚で英単語を並べても英文はできないと認識することが重要です。
まとめ
今回の内容を簡単にまとめると以下のようになります。
日本語の語順:動詞は最後に置かれる。「助詞」が重要な役割を果たしている。
英語の語順:<主語+動詞>が原則。助詞の役割は主に語順が担っている。
今回は英語と日本語の語順の違いに焦点を当てているのであえて触れませんでしたが,古典言語(the Classical Languages)といわれるラテン語や古典ギリシャ語も日本語同様かなり語順が自由な言語です。ただ,これらにも助詞という概念はなく,日本語の場合とは事情が異なります。
その他,言語学の観点から言うと,語順や助詞について面白い(と思っているのは私だけかもしれない)話が沢山あるのですが,それらについてもまた別の機会に触れることにしましょう。