【2021年度大学入試】大学入試動向 安全志向の加速と地元志向の高まり

大学入試

いよいよ今年も本格的な受験シーズンが近づきつつあります。今年はコロナや共通テストの導入などもあり、例年以上に不確定要素が山積みの状態です。近年、安全志向の高まりを見せていた大学入試業界ですが、今年はその動きがさらに加速し、あわせて地元志向も高まると予想されます。

その要因として考えられるのは以下の5点です。

  • ・共通テストの導入
  • ・コロナの感染拡大への不安
  • ・金銭的事情
  • ・定員厳格化・推薦入試枠の拡大傾向
  • ・地元志向の高まり

以下では、これら5点の要因について詳しく見ていきたいと思います。

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共通テストの導入

2021年度大学入試から、これまでのセンター試験に代わって、大学入学共通テストが導入されます。共通テストを巡るドタバタ劇(英語の民間試験活用・記述式問題の導入延期)については、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

新たな学習指導要領に基づく試験もそうですが、初年度はもちろん、導入から2〜3年は難易度が安定せず、データも少ない状態が続きます。ある意味公平な状況と言えなくもないものの、そう言われたところで受験生にとって安心材料にはなりません。現役生の浪人回避志向はさらに高まるでしょう。

ただでさえ今年の現役生は、共通テストを巡る混乱に加えてコロナの影響と、外部要因に振り回されてばかりでした。これ以上ゴタゴタに巻き込まれるのはまっぴらごめんと考える受験生も一定数いるのではないかと思われます。

コロナの感染拡大への不安

今年一番の不安材料はコロナの感染拡大の可能性です。欧州では夏以降の感染再拡大により、各地で再びロックダウンが行われる事態となっています。これから日本も冬に突入し、大学入試が本格化する2月にどのような状況になっているのか、現時点ではまったく予想ができません

各大学、再受験日の設定などの準備はしているようですが、最悪の場合、受験ができないまま入試時期が過ぎてしまう可能性もあります。私立でも、共通テストや調査書などから判断せざるを得なくなるかもしれません。単に学力の問題だったのであれば、自分の努力次第と諦めることができます。しかし、こうした外部要因が重なると、頭では分かっていてもそう簡単には納得できないというのが人情ではないでしょうか。

そうでなくても、受験生は受験が近づくにつれ、大きなプレッシャーを感じ、精神的に不安定になるものです。例年以上に不安定な状況が続くことはストレスでしかなく、志望校のレベルを1段階下げてもいいから合格を手に入れたいという人も多いのではないかと思われます。

定員の厳格化・推薦入試枠の拡大傾向

私大の定員厳格化の動きは今に始まったことではありませんが、今後も続くことが予想されます。今年の受験生は、それに加えてコロナの影響も考慮しなければいけないわけですから、最悪の事態を考え、早めに安全な大学への切符を手に入れておきたいと考える人が増えるのも不思議ではないでしょう。

各大学が総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)の枠を拡大していることもあり、一刻も早く合格を手にしておきたいと考える人がこれらを選ぶのは自然な流れです。個人的には、学力をきちんと測定できる形式であれば、総合型選抜や学校推薦型選抜はもっと積極的に利用されてもいいのではないかと思います。

従来の日本の大学は入り口(入試)を狭めて、出口(入学後から卒業まで)を広くする方式を採用していました。入るのは大変ですが、一度入ってしまえば(一生懸命勉強をしなくても)よほどのことがない限り卒業できます。この方式は、人材育成という意味では効果的とは言えず、本格的な転換点に差し掛かっているのかもしれません。

金銭的事情

出願するにも、受験のために地方から大都市圏(またはその逆)へ移動・宿泊するにも、まず必要なのはお金です。合格後も入学金や授業料、一人暮らしをするのであればそのための引越し費用や生活費などが必要となります。コロナの影響で収入が減少した世帯も多いでしょう。生徒さんも親御さんも、家計への影響を考慮しないわけにはいきません。今までのように安全校や挑戦校を含めた多数の大学に出願する余裕のある家庭が少なくなり、受験生の平均出願数は減少すると推測されます。

家計の負担を考慮しなければならず、出願先を絞らなければいけないとなると、今の学力で「確実に入れる大学」や大学卒業後を見据えて「就職に強い大学」を選ぶ受験生が増える可能性が高い、と言えるでしょう。それが大学を選ぶ基準として良いか悪いかはさておき、そうせざるを得ない人は決して少なくないのではないかと思われます。

大学運営側の視点で考えても、出願数の減少は利益減に直結する頭の痛い問題です。ただでさえ、定員の厳格化などによって出願料、授業料収入に影響が出ています。今後、東京女子医大のように、(それが適正なものかどうかはさておき)授業料の値上げを行う大学が増えるかもしれません

地元志向の高まり

今年大学に入学した新入生の中には、夏頃までずっと地方の実家から東京の大学のオンライン授業を受けていたという人も少なくないようです。仕方のないこととは言え、これでは大学に入学した意味がない、と感じる人がいても不思議ではありません。こうした状況下で、本当に東京の大学に行くことが良いことなのか、という点が見直されることになるのではないでしょうか。

そうでなくても近年の大学受験においては、大学側が目指す学生の多様性に向けた動きと逆行するかのような学生のローカル化が進行しています。文科省の調査によると、2018年度時点で、東京の大学に入学した学生の69.2%が東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)出身者だったそうです。もちろんこれは平均値ですから、個々の大学で見れば構成比率にはバラツキが見られるでしょうが、今後の動向を予測する1つのデータとしては有効かもしれません。

安全志向・地元志向の高まりによって、これまで東京の大学を受験していたような受験生が遠征を避け、地元あるいは周辺地域を第一志望に切り替える可能性もあります。元々地元の大学を志望していた受験生からすると、思わぬ強敵が出現し、倍率が上がるということになりかねません。逆に、少子化などの影響で生徒数の減少に悩まされている地方の大学にとっては絶好のチャンスになり得るとも言えます。これを機に地域の活性化を図ることも可能です。

コロナの影響でテレワークが一気に普及し、仕事のために大都市圏にいなければいけないという状況もなくなりました。今後もこの流れは加速し、コロナ終息後も以前のような生活様式に戻ることはないと思われます。働き方も多様になり、東京への一極集中が解消されるという意味では歓迎すべきことなのかもしれません。

まとめ

いろいろと不確定要素はありますが、難関大志望上位層は例年通りで、特に動きに変化はなく、中間層も同様だと思われます。悩ましいのは、難関大志望の下位層(と感じている人)や中堅大志望者です。実力的にギリギリ合格できるかどうかという難関大志望者が、安全策をとって第一志望を中堅大に切り替えれば、中堅大での競争が激化します。定員数は変わらないわけですから、あとはところてん式にその影響が他の大学にも波及していくことになるでしょう。中堅大ならなんとかなりそうだと思って油断していると、思わぬところで足元をすくわれることになるかもしれません。

また、今までのように大学卒業後も大学名だけで勝負できる時代は過ぎ去りつつあります。これからは「どの大学を卒業したか」ではなく「何ができるのか」、すなわち個々人の能力が問われる時代となるでしょう。

海外の大学の講義もオンラインで手軽に受講できるようになりました。大学によっては、要件を満たせば学位も取得できます。東京の大学に行くことを至上命題とする価値観は転換を迫られることになるでしょう。

大学側が学生の多様性を求めるのであれば、まず大学側から働きかけて多様な学生さんが集まるような魅力的な環境を作り出さなければいけません。もはや黙っていても受験生が増加する時代は終焉を迎えたと言ってもいいでしょう。各大学の今後の舵取りに一層の注目が集まります。

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