【大学入試】共通テストへの記述式問題導入に84.0%の大学が否定的な回答

大学入試

文科省が2020年10月27日(木)に公表した調査結果によって、共通テストへの記述式問題導入に84.0%の大学が否定的な回答をしていたことが明らかになりました。この調査は、全ての大学(学生募集停止の大学を除いた、国立大学、公立大学、私立大学の計771大学)を対象に行われたものです。回収数は699大学(2,222学部)、回収率は90.7%でした。

また同調査では英語のスピーキング・ライティングの評価方法についての調査も行われています。こちらも記述式問題同様、否定的な回答が多く見られました。今回は発表された資料の内容について、少し詳しく見ていきたいと思います。

なお、この記事で紹介している資料は文科省のHPで確認可能です。

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共通テストへの記述式問題導入について

共通テストで記述式問題導入を出題すべき」という質問に対しては、

  • 肯定的回答(とてもそう思う+そう思う):15.0%
  • 否定的回答(あまりそう思わない+そう思わない):84.0%

という結果になりました。

一方、「個別入試(一般選抜)の記述式問題を充実すべき」という質問に対しては、肯定的回答が58.8%、否定的回答が40.3%という結果になっています。

次に、回答を国公私立別に見てみると、「共通テストで記述式問題導入を出題すべき」という質問に関しては、

  • 国立大学:肯定的回答6.0% 否定的回答93.8%
  • 公立大学:肯定的回答12.6% 否定的回答84.0%
  • 私立大学:肯定的回答17.3% 否定的回答81.7%

となりました。また、「個別入試(一般選抜)の記述式問題を充実すべき」という質問に対しては、

  • 国立大学:肯定的回答77.6% 否定的回答22.0%
  • 公立大学:肯定的回答78.9% 否定的回答17.7%
  • 私立大学:肯定的回答52.4% 否定的回答46.9%

という結果になっています。

  

これらの結果を見ると、各大学、共通テストで記述式問題を出題する必要性を感じていない、という点で共通しているようです。

個別入試での記述式問題に対するスタンスは国公立と私立で若干温度差があるようにも見えますが、私立大学にはマークシート方式の試験を実施しており、そもそも記述式問題を出題していない大学もあることを考慮すれば妥当な結果だと思われます。

少なくともこの結果を見る限り、あれだけ文科省が強力に記述式問題導入を推し進めていたのはなぜだったのだろうか、と首を傾げざるを得ません。

英語のスピーキング・ライティングの評価方法について

続いて、英語のスピーキング・ライティングの評価方法についての調査結果に移りましょう(なお、公表された資料ではこちらの方が先に紹介されています)。

英語のスピーキング・ライティングを「共通テストに出題して評価すべき」に対しては、

  • 肯定的回答:32.3%
  • 否定的回答:66.9%

という結果になりました。また、「共通テストの枠組みで英語資格・検定試験を活用して評価すべき」(つまり民間試験活用)に対しては、

  • 肯定的回答:32.0%
  • 否定的回答:66.9%

と、同じような結果になっています。

次に、記述試験に関する回答同様、国公私立別に見てみると、「共通テストに出題して評価すべき」という質問に関しては、

  • 国立大学:肯定的回答25.5 否定的回答74.3
  • 公立大学:肯定的回答46.3% 否定的回答50.3%
  • 私立大学:肯定的回答32.4% 否定的回答66.9%

となりました。また、「共通テストの枠組みで英語資格・検定試験を活用して評価すべき」という質問に対しては、

  • 国立大学:肯定的回答27.0 否定的回答72.7
  • 公立大学:肯定的回答20.6% 否定的回答76.0%
  • 私立大学:肯定的回答34.3% 否定的回答64.6%

という結果になっています。

これらを見ると、英語のスピーキング・ライティングを「共通テストに出題して評価すべき」という質問に対しては、公立大学の肯定的・否定的回答が拮抗しているものの、国私立では否定的回答が肯定的回答の2倍以上となり、全体としても否定的回答が肯定的回答の2倍以上となりました。

また、「共通テストの枠組みで英語資格・検定試験を活用して評価すべき」という質問に対しては、国公私立の多くが否定的回答をしています。民間試験活用に関しては、これまでも公平性や制度の不備が指摘されてきました。それらの問題が解決されない限り、肯定的回答が増えることはないでしょう。

まとめ

今回公表された調査結果を受けて、「共通テストへの記述式問題導入」についても「英語のスピーキング・ライティングの評価方法」についても、文科省と大学側の温度差および価値観の違いが改めて浮き彫りになりました。

文科省側は、これまでと同じトップダウン型のやり方で大学入試制度を半ば強制的に変更することで、高校以下の教育を変えようとしています。しかし、こうしたあまりにも現場の声を無視したやり方はもう限界にきているといっていいでしょう。トップダウン型ではなく、現場志向のボトムアップ型の改革が望まれます。

記述式問題や英語の4技能評価を取り入れる、というコンセプト自体は間違っていないのですが、理想だけが先走り過ぎて現実がまったく追い付いていないというのが現状です。そもそも、これらは共通テストで測るべき能力なのかという議論も行われておらず、議論の前提となるエビデンスも提示されていません。また、本来であれば大学入学者の選抜方法は各大学の裁量に委ねられるべきです。各方面からの色々な声があったとしても、外部から口出しすることではありません。

何より大切にすべきなのは当事者であり、この国の将来を担う生徒たちです。延期となった記述式問題導入や英語の民間試験活用の議論の過程で、生徒たちは散々振り回されてきました。これ以上、現場を無視した大人の意味不明な議論で生徒たちを振り回してはいけません。生徒たちと向き合い、その将来を真剣に考えた末での教育制度改革を行ってほしいものです。

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