計算ミスの原因と解決策

試験や模試などで計算ミスをしても、「ケアレスミスだから気にしないでおこう」とか「単なる計算ミスだからなんとかなるだろう」と済ませてしまう人は多いのではないでしょうか?

計算ミスは多くの人が悩まされる問題でありながら、同時に多くの人が「大した問題ではない」として片付けてしまう問題でもあります。しかし実際には、しっかりと原因を分析して対策を講じないといつまで経ってもなくなりません。それどころか、有効な対策も打たずにミスを放置したまま先に進むと、気づいた時にはどこがわからないのかもわからなくなり、問題を解決するために多くの時間を要するといった事態を招くことになります。

いうまでもなく、受験の最終目標は志望校に合格することです。その受験本番において、ほとんどの人が解けないような(つまり解く必要がない)超難問を1問解けたとしても(それはそれで素晴らしいことですが)、計算ミスで大量失点してしまえば合格点に届きません。計算問題の5点も超難問の5点も、受験においては同じ価値を持つ5点。計算ミスをなくすことは試験や受験において極めて重要なことなのです。

特に中学受験においては多くの難関中学で計算問題が出題され、しかも1問1問の配点が大きいため、計算をいかに素早く正確に行えるかで合否が分かれると言っても過言ではありません。

計算以外の問題や高校受験、大学受験でも同じです。記述式問題では、解法が合っていても、途中計算を間違えて正解にたどり着けなければ減点されてしまいます。穴埋め式の問題であれば情状酌量の余地なく0点です。

今回は多くの人が悩んでいる計算ミスの原因を大きく7つに分類し、それぞれの原因に対する解決策を書きました。

原因①基本的な計算力が身についていない

そもそも基本的な計算力が身についていないという根本的かつ大きな問題です。算数や数学の学習は、基礎となる学習内容を土台にしてその先の内容を積み重ねていくという形で進んでいきます。基礎の部分が疎かになり土台が不安定なままだと、次の学習内容を上手く積み重ねることができず、時間もかかってやる気が削がれるうえにミスが多発するという悲しい事態が起こるのです。

解決策

時間がかかり、自分にとって難しいと感じる計算を徒らに繰り返しても改善は望めません。多くの場合、やる気と自信を喪失して事態はより悪化します。ある分野の計算問題がどうしても難しいと感じたら、まずはその計算を各要素に分解し、自分がどの部分で躓いているのかをしっかり見極めることが大切です。それができなければ対応策を講じることもできません。

小学生であれば、まず1学年前、中学1〜2年生は小学校の計算まで戻る必要があります。もちろん高校生でも必要とあらば小学校の計算まで戻る必要があるでしょう。自分がストレスなく解けるレベルの問題まで戻り、成功体験を積み重ねながら問題を解決していかなければなりません。遠回りのように見えて、結局はそれが問題解決への一番の近道なのです。

例えば高校数学の場合、数Ⅰの内容をきちんと理解し、計算を素早く正確にこなせるようになっておかないと、その後の学習はもちろん、大学受験においても支障をきたします。数学が苦手な高校生の中には、中学数学の最初に学ぶ計算で躓き、それを引きずっているという人も少なくありません。複雑な文字式の計算になるとやたらと時間がかかってしまう、ミスが増えるという人は、場合によっては中学数学までさかのぼることも必要になるでしょう。

中学生の場合、圧倒的に多いのは中1の文字式で躓いてしまう人です。その中には、小学校高学年で習う計算が怪しい人も少なくありません。文字式に躓いているようで、実は小学校レベルの分数の計算ができていない、といったことが少なくないのです。小学校高学年の算数の計算や中学数学の文字式で躓くと、その後のあらゆる分野の学習に支障をきたします。早め早めの対処が必要です。

中学受験を控えた小学生の場合、特に苦手とする人が多いのは分数の足し算・引き算、小数の割り算・掛け算、□を求める問題などです。時間がかかってしまう、ミスが多いという人は、まずそれぞれの計算を徹底的に練習し、その後に複雑な問題を解くようにするといいでしょう。無理をして複雑な問題ばかりをやってもあまり効果はありません。

原因②書くべき途中式を省略し、必要のない途中式を書いている

計算問題が苦手な生徒さんのノートを見ると、計算を進める上で書いておいたほうがいいと思われる途中式を省略し、逆に不必要と思われる途中式を書いている事例が多く見受けられます。途中式は多すぎてもいけませんし、少なすぎてもいけません。多すぎると時間がかかる上に見直しをしづらくなりますし、少なすぎると後で復習するときにその時の自分が何を考え、どこで間違えたのか分からなくなってしまうからです。

解決策

まずは問題集や参考書の解答・解説などを参考に少し丁寧すぎるくらいに書いてみることをお勧めします。そうはいっても、いつまでも丁寧に書いていると面倒ですし、時間がかかって仕方ありません。ミスがなくなってきたら、だんだん省略できそうなところを省略していきましょう。暗算も積極的に活用すべきです。

省略しすぎてミスが増えた場合は、また調節する必要があります。最終的には個人個人が試行錯誤を繰り返しながら、最適な方法を見つけるしかありません。どこまで省略可能かについては自分1人ではなかなか判断がつかないこともあるでしょう。そんなときは適切な指導者に相談をしてアドバイスしてもらってください。

原因③いきなり解き始めてしまう

問題文をしっかり読まずに焦って解き始めた結果間違えてしまったり、途中で何を求めているのか分からなくなってしまったり、という生徒さんは少なくないようです。これは計算問題に限ったことではありません。早く解こうと焦ってしまうのかもしれませんが、目的地も決めないまま走り始めて結局迷子になってゴールにたどり着けないようでは、費やした時間が無駄になってしまいます。

解決策

計算問題に限らず、問題を見たらまずどのように解くか方針を決めることが大切です。計算問題であれば、計算方法や答えがどれくらいの数字になるのかおおよそ予想をしてから解き始めるようにしましょう。答えをある程度予想しておくことで、それとかけ離れた数字が出た場合、どこかで計算ミスをしているのではないかと気づくことができます。慣れないうちは予想が外れることも多いかもしれませんが、適切な方法で数をこなしていけば徐々に精度も高まっていくはずです。

いきなり解き始めないという姿勢は、試験全体を通しても言えることです。試験が始まったらまず全ての問題をざっと見て、おおよその時間配分や優先順位を決めてから解き始めるようにしましょう。これも訓練を重ねるうちに少しずつできるようになります。

原因④字が雑すぎる

字を雑に書きすぎて写し間違えたり、自分の書いた字を見間違えたりという人はよくいます。多くの場合、雑に書くのは考えがまとまらないうちに書き始めているからです。思いつくままあちこちに計算式を書き散らかして、結果的に確認不可能な状態に陥ってしまいます。これでは試験中に見直しをしようと思ってもできませんし、後で解き直そうと思っても自分がどこをどう間違えたのか振り返ることができません。

注意しなくてはならないのは、これが問題となるのはあくまで計算ミスが多い人の場合のことだということです。世の中には乱雑な書き方をしているようでも計算は合っているという人も一定数います。雑な書き方に見えても計算ミスがないのであれば、本人の頭の中ではきちんと整理されている可能性が高いので、無理に矯正しようとしないほうがいいでしょう。

解決策

これは私がいつも生徒に言っていることでもあるのですが、無理に字を綺麗に書こうとする必要はありません。それより、自分にとっても他人にとっても読みやすいよう丁寧に書くという心がけが大切です。試験の答案であれば採点者のことを考えるといいかもしれません。採点する人にとって読みやすい字を書くよう心がければ、そこまで乱雑な字にはならないでしょう。

また、普段から復習する習慣をきちんと身につけておくことも大切です。復習するためには、自分の書いたものを見直す必要があります。そんなときに自分の書いた字や数字が自分でも判別できないようなものであれば余計な時間がかかりますし、復習になりません。復習する習慣が確立されていれば、その効率を高めるために見やすく書こうという意識を持つことができるでしょう。

時々、小さく丁寧に字を書こうとしてかえって時間がかかっている、あるいは見直しがしづらいという人も見かけます。雑すぎるのも考えものですが、丁寧ということにこだわりすぎることもまた好ましくありません。要はバランスの問題です。

原因⑤自分が苦手な箇所・間違えやすい箇所を把握していない

苦手な計算や計算する際に間違えやすい箇所は人それぞれです。そういった箇所には特別の注意を払う必要があるのですが、そもそもどこで間違えやすいのか認識していない人も多く見かけます。注意すべき箇所がわからないままいつも同じことを繰り返していると、いつまで経ってもミスは減りません。

解決策

まず自分が苦手とする計算や間違えやすい箇所をきちんと認識しておく必要があります。自分で勉強する際にきちんと解き直しや分析をして、自分の苦手箇所を把握しておきましょう。苦手な計算が出てきたら、いつもより少し注意深くなる必要があります。最初は煩わしく感じるかもしれませんが、こうした取り組むを続けていれば慣れてきますし、そのうち意識しなくても自然とできるようになるので大丈夫です。

原因⑥工夫をしようとしない

自分が学校などで最初に習った解き方を愚直に貫こうとする生徒もよく見かけます。確かに最初に習う解き方は基本ではあるのですが、いつまでもそれを続けていれば良いということでもありません。基本はあくまで基本ですから、それが身についた後はそれぞれの学習者が自分に合った形に工夫(カスタマイズ)していくことが必要です。

例えば、習ったばかりの頃は解くのに10分かかっていた計算があるとしましょう。もしそれを解くのにいつまでも10分かかるままだったとしたら、次のステップに進んだときにかかる時間がどんどん増えていってしまいます。練習を積み重ねるうちに、最初は10分かかっていた問題を2〜3分で解けるようになっておかないと、いつまで経っても次のステップに進めません。

解決策

計算練習をするときは何も考えずに惰性で取り組むのではなく、常にもっと効率的な解き方はないか、(誤解を恐れずに言えば)もっと楽する方法がないか、と考えながら取り組むことが重要です。例えば、暗算で済ませられるところはそれで済ませればいいでしょう。他にも、「20×20」くらいまでの平方数や、「7!」くらいまでの階乗の計算結果は覚えておくと便利でしょうし、同じような計算を繰り返す中でよく出てくる数字は自然と覚えてしまうと思います。こうやって自分の手札を増やしていくと計算が格段に楽になるはずです。

誰だって面倒な計算は嫌でしょうし、できることなら楽をしたいという気持ちがあるのは自然なことだと思います。ただ漫然とやるのではなく、常に向上心を持って取り組むことが必要です。

原因⑦時間制限を設けずに解いている

試験本番では制限時間や緊張からくる焦りなどもあって、普段通りの力を発揮するのは簡単なことではありません。試験本番で普段通りの力を発揮するためには、日頃から本番を想定した環境で練習を積んで体を慣らしておくことが必要です。時間をかければ解ける、は本番では通用しません。ゲーム感覚で速く解こうとして色々工夫する子もいますが、時間制限があって必要に迫られない限りだらだらやってしまう子がいるのも事実です。

また、時間に対する意識が低い人は、学習を行う上で効率的に進められないだけでなく、自分の解き方を改善しようという意欲に欠ける傾向があります。制限時間というある種の目標があるからこそ、なるべく早く効率的に解こうと工夫するようになるのです。目標もなく漫然と取り組んでいても改善は望めません。

解決策

計算問題に取り組むときはタイマーをセットしてから始めるようにしましょう。問題集によっては目標時間を記載しているものもありますが、それよりも若干短いくらいの制限時間を設定するのがコツです。少し厳しいくらいの制限をつけて練習を繰り返すうちに、脳や体が慣れてきます。最終的には最初に設定した目標時間の半分程度の時間でこなせるようになるでしょう。

より具体的な解決策が必要な方に

一口に計算ミスと言っても、その背後には多くの原因が潜んでいます。実際にはどれか1つのみが原因ということは少なく、いくつかの原因が重なった結果ミスにつながっているというケースがほとんどです。

1つ誤解しないでいただきたいのですが、ミスをすること自体は悪いことでもなんでもありません。人間は失敗から多くのことを学ぶことができるからです。大切なのは、失敗したときに何となくで済ませるのではなく、きちんと原因を分析して改善策を検討する、つまり失敗から学ぼうとする姿勢を持ち続けることです。

初めから計算ミスがまったくない人などほとんどいません。計算が得意な人も、ミスを重ねる中で原因分析と修正を繰り返した結果、得意といえるまでの状況に到達したのだと言うことができます。ここであげた各原因について、個人やご家庭で分析するには限界があるかもしれませんが、これらのことを意識するだけでもだいぶ取り組み方が変わってますし、応用可能な部分も多くあるはずです。

自分(あるいは親)だけではどうしても分析・改善が難しい、より具体的な解決策が必要という方向けに、玄々舎では学習コーチング、学習コンサルティングサービスを提供しています。計算ミスの改善だけでなく、個別最適化された学習法の提案や学習計画の策定などを通じて、生徒さんや親御さんの負担を少しでも減らすお手伝いができれば何よりです。